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離婚の基礎知識 〜離婚届を出す前に知っておきたいこと〜


 近年離婚は増加の傾向を辿っていますが、離婚の決心は大変重要なことです。離婚をすることが勇気のいることだとすれば、離婚を考え直すことも勇気のいることではないでしょうか?
 そのための離婚に関する最低限の知識を知ることは、離婚届を出すまでに、決して遅くはないと思います。その上で、離婚について考えていくことも一つの方法だと思います。

目次
(1) 離婚手続の種類
(2) 協議離婚
(3) 離婚の前に決める事
(4) 親権
(5) 財産分与
(6) 慰謝料
(7) 養育費
(8) 面会交渉権
(9) 注意事項


(1) 離婚手続の種類

 離婚には、下記表の手続の4種類があります。

協議離婚 夫婦間で話し合い離婚をするもので、離婚原因の理由を問わない。双方の合意があれば、離婚届の提出で離婚成立。
調停離婚 当事者の協議が合意に達しない場合に家庭裁判所に調停を申立て仲介をしてもらい、合意に達した場合に離婚が成立します。
審判離婚 調停で合意に達しなかった場合でも、家庭裁判所が離婚が妥当と認める場合には、審判離婚に移行し、審判が下り離婚が成立します。
裁判離婚 家庭裁判所での調停・審判でも離婚が成立しなかった場合に、地方裁判所に離婚の裁判を起こすことになります。この判決に従い離婚が成立します。裁判離婚の場合、法律上の離婚原因が要求されます。


 上記の中でも、離婚のほとんどが協議離婚の方法で離婚されているのが現在の状況です。
協議離婚が多いのは、様々な理由がありますが、裁判離婚に比べて手続面、費用面や離婚成立までの期間を考えると協議離婚による話し合いで決めたほうがよいという事は当然でしょう。


 他方、協議で行うため、離婚後の問題が多く、たとえば、慰謝料財産分与養育費などの法的な対策をとらなかったことにより、とりわけ母子家庭の生活状況が厳しいものとされています。

 現在、離婚の件数が増加しているのは厚生労働省の統計から見ることができますが、やはり母子家庭が多く、これは裁判所の原則的な考え方が母優先とされていることからもうかがえられます。

 離婚の協議を行うとき、とかく感情になりがちで、冷静に物事を判断する力が鈍ってしまうのは仕方のないことかもしれませんが、今後新たな生活をするとき、特に子供がいる場合には、予想以上の厳しい現実があることも考え、法的な対策をとるための話し合いが大事だと思います。

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(2) 協議離婚

 協議離婚とは、お互いに話し合って決める離婚です。したがって、お互いが納得して合意すれば、後は離婚届を市区町村に提出するだけです。

 協議離婚の場合、離婚する理由は必要がなく、当事者が合意していればよいので、この協議離婚が手続的には最も容易な方法です。

 しかし、協議離婚であっても、未成年の子供がいれば離婚届の親権者欄にどちらかが記載されていなければ受理されませんし、協議の過程で相手が反対すれば協議では離婚はできないのです。したがって、そのような場合に裁判所の関与による他の離婚手続が必要なこともあるのです。

 協議で離婚する場合には、裁判所の関与の場合と異なり、必ず書面で取り決めをしておくことが大切です。書面は、公正証書で作成することが最も効果的です。
 金銭債権については、公正証書にしておくことで、相手方が約束通りに支払わない場合に強制的に差押をすることができるからです。これを執行認諾文言といいます。

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(3) 離婚の前に決める事

 協議が成立していれば離婚をするのは簡単です。離婚届を役所に提出すればよいのです。
 しかし、それでよいのでしょうか?

 離婚をする前に決めておくべきことがあります。慰謝料財産分与養育費親権(これは離婚届の必要記載事項)などです。
 特に離婚時には口頭などで取り決めてはいたが、いざ離婚すると自分の生活に入ることで環境も変わるため、『言った言わない』、の世界に入ってしまうこともあります。
このような財産などの金銭に関する取り決めは、離婚が成立する前に決めておくことが大事です。
 何事も事前に対策をしましょう。

 以下、一つ一つ見ていきます。子供がいない場合には、慰謝料と財産分与が問題となってきます。子供がいる場合には、これに加えて、親権、養育費、面会交渉権が問題となってくるでしょう。

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(4) 親権

 親権は、子供の身の回りなどの生活上の世話をする身上監護権と子供の財産を子供に代わって管理する財産管理権の2つに分けられます。

 親権者の決定は、夫婦間の離婚協議で話し合いがまとまらず、争いになることもしばしばあります。

 しかし、争えば争うほど傷を負うのは、他でもない子供自身です。小さい子供であればあるほど、両親の離婚は大きな心の傷を負うことが多いでしょう。子供のことを第一に考えることで、親権問題も解決できる話し合いが望まれます。

 子供にとって見れば、離婚は親の勝手な行為であり、感情的になって子供のことを忘れてはいけません。よく考えてみてください。子供を引き取る側は、子供のことを考えることが、自分のことを考えることでもあり、逆に、子供と別れる側は、子供を扶養する義務があるのです。

 また、親権で争いがある場合に監護権というものが威力を発揮することがしばしばあります。
 監護権とは、親権の一部、すなわち実際に子供と生活して、身の回りの面倒をする人のことです。親権者と監護者は別に定めることができますので、親権でもめているような場合には、一方を親権者に、もう一方を監護者にすることで解決するのもよいでしょう。

 裁判の判例では、一般に子供が小さいうちは母親に親権が認めらるケースが多く、監護者の指定の場合にも同様に、母親が原則的となっています。これは子供にとって母親は欠かせない存在とみなされているといえるでしょう。

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(5) 財産分与

 離婚した一方は、他方に対して、財産の分与を請求することができます。財産分与は、婚姻期間中に得た共同財産の清算離婚後の弱者に対する扶養を目的としています。

 婚姻中に得た財産とは、預貯金やマイホームなどがその対象となり、これは、「妻が専業主婦だから・・・」、「夫名義だから・・・」、などで対象外となることはなく、夫婦の協力により得た財産として財産分与の対象となるのです。

 離婚後の弱者に対する生活の扶養については、ほとんどの場合、弱者とは妻のことであり、離婚後新たな生活基盤を作り上げるために安定した職を探したり、現在の住居から出て行くことになった場合の新住居地での生活など、安定した収入を得ていた父親よりも経済的に弱い立場の者の生活を支えるという意味でもあります。
 この扶養については、離婚の原因の責任や収入の状況などの一切の事情を勘案して決めることになります。

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(6) 慰謝料

 慰謝料とは、離婚原因を作った配偶者が、精神的な苦痛を受けた相手方配偶者に対して支払わなければならない損害の賠償のことです。

 慰謝料は、一般的に離婚について原因のあるほうが支払う必要があります。他方、どちらに責任があるか不明の場合やどちらにも責任があるような場合には、その比重を決めることにもなります。どちらにも責任がない場合には慰謝料がないこともあります。

 慰謝料は、実務上、財産分与と含めて計算することが多いのですが、これは慰謝料、婚姻中の財産など全てを含めて分与するほうがわかりやすく、計算もしやすいことからでしょう。

 慰謝料の額については法律上の規定はありませんので、今までの判例などのデーターや相場をもとに、責任の度合いや精神的な苦痛などの全てをもとに決めていくことになります。

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(7) 養育費

 親は未成年の子供に対して、自分の生活と同等のレベルの生活を保障する義務を負っています。
 すなわち、未成年の子供を育てている親は、他方の親に養育費を請求できるのです。子供を引き取ったか否かは関係なく、養育費は親が分担して負担しなければならないものです。

 しかし、現実には、養育費自体を請求しない、取り決めはあったが口約束のため、その後支払いがなくなったというケースが少なくはありません。離婚時にきちんと養育費の額、支払方法などを決めておくことが大事です。後日のトラブル防止のために公正証書で作成しておくのがよいでしょう。

 実際の養育費の月平均はおよそ5万円ぐらいの統計も出ています。しかし、これもあくまで平均であり、経済状況などにより話し合って決めることが大切です。

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(8) 面会交渉権

 面会交渉権は、別れた方の親が、離婚後、子供に会うことができる権利のことです。
 これは子供にとっても重要なことでもありますし、別れた親にとっても会いたいと思うことは自然なことです。特に離婚時にきちんとした分与等を行い、養育費も支払っている場合には、たとえ離れていても子供に対する責任と自覚は有しているものと考えられますので、その権利は当然といえるでしょう。

 しかし、育てている親の立場からは、複雑なこともあります。このような面会に関する事項も、離婚時にきちんと取り決めておくほうが後々のためにも必要なことです。

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(9) 注意事項

 離婚前に決めておくことは大事とお話しましたが、これには時効という問題もあるからです。

財産分与請求 離婚が成立した日から2年間
慰謝料請求 離婚が成立した日から3年間

 このようなことからも、離婚前に決めておくことが大事なのです。
 また、養育費は、子供が社会的にも経済的にも自立すれば支払う義務はなくなりますが、養育費の額の増減の変更は可能です。
 しかし、トラブル防止のために書面で、その旨明記しておくほうがよいでしょう。


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