規制緩和の中で、信書便事業が許可制度化されましたが、郵政の民営化などからも、この許可がどう影響してくるか重要なところです。
さて、実際の業界がどのようであろうと、信書便は許可を受けた業者しか取り扱うことはできないのが法律の規定です。信書便事業で本格的に参入するのも良し、関連業務の担保として業の許可を取得しておくのも良しとして、自社の創意工夫により発展できればと思います。
(1) 信書便事業の概要
「信書に該当する文書に関する指針」(総務省郵政行政局)には、以下のことが記載されています。 |
「信書」とは |
「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」と定義されています。文書の中に差出人の意思の表示や事実の通知があれば、信書となります。 |
「特定の受取人」とは |
差出人がその意思の表示又は事実の通知を受ける者として特に定めた者のことをいいます。 |
「意思を表示し、又は事実を通知する」とは |
差出人の考えや思いを表し、又は現実に起こり若しくは存在する事柄等の事実を伝えることをいいます。 |
「文書」とは |
文字・記号・符号等、人の知覚によって認識することができる情報が記載された紙その他の有体物であることをいいます。 |
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信書に該当するかどうかは?
差出人AがBに手紙を送る場合はもちろん、差出人Aが同一文書を格別にB、C、Dに送付する場合も信書にあたるということです。
差出人が、特定の受取人(B、C、D)に対して、文書の内容に記載されている意思や事実を送付することが信書便にあたるのです。また、文書は手書きではなくても、パソコン等を用いて印字した文書でも信書に該当します。 |
貨物運送事業をおこなっている場合、必然的に信書便の運送をおこなっている可能性もあるかもしれません。そういう意味では、信書か否かを考えて事業を進めるのであれば、担保として信書便事業の許可を受けておくほうが無難という考えも出てくると思われます。
(2) 信書便制度の目的
信書便法は、「民間事業者による信書の送達の事業の許可制度を実施し、その業務の適正な運営を確保するための措置を講ずることにより、郵便法と相まって、信書の送達の役務について、あまねく公平な提供を確保しつつ、利用者の選択の機会の拡大を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的」としています。
いわゆる郵便のみ可能であった信書の送達が信書便事業の許可を受けた民間業者が送達するできるようになったのです。
信書便事業とは「信書便の役務を他人の需要に応ずるために提供する事業」ことをいい、一般と特定の信書便事業に分けられます。
信書便事業の種類 |
一般信書便事業 |
全国全面参入型 |
特定信書便事業 |
特定サービス型 |
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一般と特定の現状
信書便法では、クリームスキミング(いいとこどり)を防止するとともに信書の秘密を保護するための規律が設けられており、業務への参入には許可を受ける必要があります。
現状では、非常に規制や条件の厳しい一般信書便(全国型)は、実際上、民間事業には実益が薄いとされ、特定信書便、すなわち、特定の範囲の信書のみを扱うことができる許可を取得することが適当と考えられています。 |
(3) 一般信書便事業(許可制)
一般信書便役務とは、信書便の役務であって次のいずれにも該当するものをいいます。
@ |
長さ、幅及び厚さがそれぞれ40cm、30cm、3cm以下であり、かつ、重量が250g以下の信書便物を送達するもの |
A |
国内において信書便物が差し出された日から原則3日以内に当該信書便物を送達するもの |
許可基準 |
@ |
事業計画が信書便物の秘密を保護するため適切なものであること |
A |
全国における一般信書便役務に係る信書便物の引き受け・配達の計画を含むこと |
(1)信書便差出箱の設置その他の随時かつ簡易に差出し可能な引受けの方
(2)週6日以上の配達を行うことができる配達の方法 |
B |
その他事業の遂行上適切な計画を有するものであること |
C |
事業を的確に遂行するに足る能力を有するものであること |
(料金規律)一般信書便役務について |
@ |
全国均一料金 |
A |
重量25g以下で、一定の大きさ・形状の信書便物の料金が総務省令で定める額(80円)を超えないなど |
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一般信書便事業の現状
全国均一料金、原則毎日1通からの引受、配達など、現在の郵便体制と同規模のものが求められています。
このことからも、一般信書便は民間参入しにくい分野ではあります。 |
(4) 特定信書便事業
特定信書便事業の場合、一般信書便とは異なり、事業者側のスタイルと顧客層により下記の3種類の形態を選択することが可能となっています。
当然、全て選択してもかまいません。選択した役務は、事業者側の創意工夫によりさまざまなものとなります。
@ |
3時間以内に信書便物を送達するもの
引受場所と配達場所の距離から3時間以内の地域に設定します。
複数の引受場所、配達場所がある場合には、その集配ルートを定めてこれに収まるように設定することになります。
3時間以内の制限は、信書便が差し出されたときから配達されるときまでの時間を意味します。 |
A |
1,000円(消費税込)を超える信書便物を送達するもの
配達記録、全国配達、配達日指定サービスなど事業者が顧客のニーズにあわせて考案していくことが可能となります。 |
B |
長さ、幅、厚さの合計90cm超、又は重量4kg超の信書便物を送達するもの
「長さ+幅+厚さ」が90cmを超えているか、または、重量が4kgを超えているか、のどちらかに該当すればよく、顧客層のニーズにより信書便物の送達が可能となります。 |
許可基準 |
@ |
事業計画が信書便物の秘密を保護するため適切なものであること
(信書便物の秘密の保護の確保など) |
A |
その他事業の遂行上適切な計画を有するものであること
(収支見積、法令遵守など) |
B |
事業を適確に遂行するに足る能力を有するものであること
(財産的基礎要件、貨物自動車運送事業法の許可など) |
信書便事業では、上記の事業の許可のほか、「信書便管理規程の認可申請」と「信書便約款の認可申請」をおこなう必要があります。
以下、これらの基準の概要です。
信書便約款の認可基準 |
主に以下のものが挙げられます。
- 信書便物の引受、配達、転送及び還付並びに送達日数に関する事項
- 信書便の役務に関する料金の収受に関する事項
- その他信書便事業者の責任に関する事項が適正かつ明確に定められていること
- 特定の者に対し不当な差別的取扱いをするものでないこと
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管理規程の認可基準 |
主に以下のものが挙げられます。
信書便事業者の取扱中に係る信書便物の秘密を保護するものとして適当であるもの
- 管理者の選任
- 秘密保護配慮による作業方法
- 教育及び訓練規程
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(5) 特定信書便事業の申請から事業開始まで
「信書便約款の認可申請」と「信書便管理規程の認可申請」に関しては、事業許可申請後におこなうことも可能ですので、手続書類等の進行状況によって考えて進めることも可能です。
ただし最短で事業開始をおこなうためには、全て同時におこなう方が処理期間が少なくて済みます。
申請書類の作成・証明書等の取得 |
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■ 事業の許可申請
■ 信書便管理規程の認可申請
■ 信書便約款の認可申請 |
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審査 |
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審議会への諮問・答申 |
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許可・認可 |
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事業開始の届出 |
(6) 信書該当の例
信書に該当する文書 |
信書に該当しない文書 |
書状
差出人から特定の受取人その内容を伝えるために送付する場合など |
書籍の類
新聞、雑誌、会報、会誌、手帳、カレンダー、ポスター |
請求書の類
納品書、領収書、見積書、願書、申込書、申請書、申告書、依頼書、契約書、照会書、回答書、承諾書 |
カタログ
必要なときに商品を選択して注文するためのもので、系統的に編纂された商品、申込方法、商品の広告等が印刷された商品紹介集(一般的には冊子としたもの) |
会議招集通知の類
結婚式等の招待状、業務を報告する文書 |
小切手の類
手形、株券 |
許可書の類
免許証、認定書、表彰状 |
プリペイドカードの類
商品券、図書券 |
証明書の類
印鑑証明書、納税証明書、戸籍謄本、住民票の写し |
乗車券の類
航空券、定期券、入場券 |
ダイレクトメール
文書自体に受取人が記載されている文書。
商品の購入等利用関係、契約関係等特定の受取人に差し出す趣旨が明らかな文言が記載されている文書。 |
クレジットカードの類
キャッシュカード、ローンカード |
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会員カードの類
入会証、ポイントカード、マイレージカード |
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ダイレクトメール
専ら街頭における配布や新聞折り込みを前提として作成されるチラシのようなもの。
専ら店頭における配布を前提として作成されるパンフレットやリーフレットのようなもの。 |
信書便事業は、移動ツールとして自転車でも可能ですが、一般貨物運送業や貨物軽自動車運送業の営業許可と併せれば、より効果的な運営が可能となると思いませんか?
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