(1) LLC(合同会社)とは
新会社法の施行により有限会社の制度が廃止されましたが、新しい会社形態として合同会社、いわゆるLLC(Limited Liability Company)が加わりました。
LLCは、アメリカでできた法人ですが、会社組織と組合組織の双方のメリットを活かした組織といわれています。
ただし、日本版LLCでは、税法上有利とされているパススルー制度(構成員課税)が適用されない点が大きな違いでもあります。
アメリカ版LLCの場合、法人課税と構成員課税を選択することが可能なので、構成員課税が適用されると、法人課税の二重課税とならないのです。
なお、LLP(有限責任事業組合)の場合は、パススルー制度が適用されます。
税関連の詳細は、税理士等の専門家にお聞きください。
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構成員課税とは、法人である組織には課税されずに個人に対して課税される課税方法です。
法人課税とは、組織に課税された上に、税金を引いた後の利益から分配を受けた個人の所得に対しても課税される方法です。いわゆる「二重課税」と呼ばれているものです。 |
(2) 株式会社との違いは?
LLCは、持分会社とされています。持分会社とは、出資者である社員が経営者でもあり、いわゆる所有と経営が同一・一体とされている会社です。出資者である社員は経営に参加するため、人が中心の会社であるといえます。逆に言えば、出資していない人は経営に参加できないということです。
これに対して、株式会社の場合、所有と経営が分離しているため、出資者である株主は経営者とは限らず、自由な経営ができないこともあります。人中心の会社に対して、物中心の会社といわれています。LLCの場合、株式会社よりも規則が少なく、より自由な経営が可能となります。
株式会社の場合、出資者である株主は、その出資比率に応じた利益の配分や議決権の行使などをおこなうのを原則としますが、LLCの場合、出資比率とは関係なく利益配分や議決権の行使が可能となります。
すなわち、LLCは人中心の会社のため、出資者個人の能力やノウハウなどの知的能力等が重要とされるため、資金の少ない人でもこれらをアイデア等を駆使して活躍することができる法人の形態といえるのです。少ない資金で起業可能な、たとえば、IT関連業やコンサルタント業、サービス業などがあげられます。
さて、持分会社の説明をしてきましたが、持分会社はLLC(合同会社)だけではありません。合同会社、合資会社も持分会社です。人中心の会社です。
それでは、何が違うのでしょうか?
大きな違いは、LLCは有限責任であるという点です。
株式会社や廃止された有限会社は、有限責任でした。これは出資者である株主又は社員は、会社の負債を出資した限度において責任を負うということですが、仮に負債が出た場合、出資した金額は負債の支払いに充当されますが、出資者個人の財産まで及ばないということです。出資者個人の財産は別の物と考えます。
一方、以前からある人中心である合名会社や合資会社(一部有限責任あり)の場合は、無限責任とされ、出資者個人の財産まで負債の支払い責任を負う無限責任を負っています。
しかし、LLC(合同会社)の場合、人中心の持分会社でありながら、有限責任なのです。出資者である社員は、株式会社の株主と同様、その出資の範囲内で責任を負えばよいのです。
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有限責任である株式会社やLLCでも、経営者が、個人保証をすれば、出資者としての責任は有限責任ではありますが、経営者個人の保証は残ります。
たとえば、銀行等の融資などの場合は、会社以外に経営者個人が連帯保証人となるケースなどです。 |
(3) 株式会社、LLC、LLPの主な比較
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株式会社 |
LLC |
LLP |
出資者の人数 |
1名以上 |
1名以上 |
2名以上 |
組織設定 |
株主総会や取締役設置等詳細な規定あり |
定款で自由に設定 |
組合契約書で自由に設定 |
組織内部の規定 |
会社法に従い規定 |
定款で自由に規定 |
組合契約書で自由に規定 |
設立時のポイント |
公証人による定款の認証が必要 |
公証人による定款の認証は不要 |
組合契約書を作成すればOK |
株式会社では公証役場での定款の認証が必要です。LLCの場合、定款は必要ですが、公証人による認証は不要です。したがって、認証にかかる費用はかかりません。
また、株主総会や取締役会等の会社法規定の手続をおこなわなくて良いので、設立後の運営も簡易におこなうことが可能です。
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LLCは、株式会社に組織変更することが可能ですので、将来的に株式会社を考えて、現時点では、LLCでスタートするのもよいかもしれません。
メリット、デメリットを検討したうえで、検討してみるとよいでしょう。
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(4) LLCの組織について
ご存知のとおり、株式会社の場合、株主総会や取締役等の設置義務があり、設立後も会社法の規定に従い運営手続をおこなっていきます。
これに対して、LLCの場合、定款で自由に規定できます。
社員全員が経営に参加しますので、原則として社員全員が業務を執行する権限を有します。所有と経営が一体ということです。
業務を執行する権限を有するとは、LLCの事業を運営する権限を有することで、業務を執行する権限を与えられない社員は、業務を執行できないということです。
LLCの組織規定は定款で自由に規定できるため、複数の社員がいる場合、その一部の社員を業務執行社員として規定することも可能です。
また、複数の業務執行社員のうち代表権をもつ代表社員を定めることもできます。
簡単にいいますと、業務執行社員は株式会社でいう取締役、代表社員は代表取締役のような存在です。
たとえば、ABC3名の出資した社員がいる場合、定款に何も規定しなければ、全員が業務執行する権限を有し、この中で、Aを代表社員を規定することもできますし、Bから業務執行権をはずしたければ、ABを業務執行社員として運営することもできるわけです。
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LLCの設立は、今までにないような内部ルールが可能となります。設立を検討されている方により考え方も構想も異なると思います。
また、新しく成立した会社のため、営業許可等を検討されている場合、検討が必要なケースもでてくることもあるかもしれませんので、設立の際は、専門家にご相談することをお勧めします。 |
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実務的には、合同会社であっても法人であるため、許可の対象である申請者となり、建設業や宅建業などの営業許可を取得することはできます。
肩書上、代表取締役ではなく代表社員という役職名になる点が株式会社と異なりますが、運営自体は業務執行社員がおこなう形をとれば、定款上の出資者が必ずしも登記上の業務執行社員として表示されるわけではないので、機関設定により会社の運営方法を決めていくこともできると思います。 |